感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
原著
川崎市におけるレジオネラ症患者からのレジオネラ属菌の分離状況とST1346の集積について
淀谷 雄亮原 俊吉湯澤 栄子小嶋 由香本間 幸子前川 純子森田 昌知大西 真岡部 信彦
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 96 巻 5 号 p. 193-197

詳細
抄録

レジオネラ症はレジオネラ属菌を原因とする感染症であり,国内の患者の報告数は年々増加しているが,感染源不明の事例が多い.本研究では2014年1月から2019年12月までに川崎市で分離されたLegionella pneumophila SG1計28株について感染経路の調査を目的として,Sequence-Based Typing(SBT)法による解析を実施した.その結果ST1346が5株,ST89,ST92及びST142が2株ずつ検出され,残りの17株はそれぞれ異なるSTとなった.最も多く分離されたST1346は5株中4株が2016年11月に短期間に集中して分離されており,ST1346の5株目は11カ月後の2018年10月に分離された.ST1346の5株について全ゲノム解析を行い,pairwise single-nucleotide variant(SNV)の算出を行ったところ,5株間のSNV数は3~6SNVであり,非常に近縁の株であることが明らかとなった.継続的にレジオネラ症患者から菌株を分離しSBT法を実施することで,同一STの集積が確認されSNV解析から同一の感染源に由来することが示唆された.この解析を実施し,疫学調査に反映させることで,集団感染を探知できる可能性がある.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top