感染症学雑誌
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アルコール類のウイルス不活化作用に関する研究エタノール消毒における生体試料の影響
渡辺 実野田 伸司山田 不二造藤本 進
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1981 年 55 巻 5 号 p. 367-372

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抄録

生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.
エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.
これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.
最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.

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