感染症学雑誌
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散発性Campylobacter腸炎に関する調査研究
吉崎 悦郎神木 照雄坂崎 利一田村 和満
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1982 年 56 巻 12 号 p. 1153-1159

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抄録

1979年4月から1982年3月までの3年間, 散発性下痢腸炎患者1,114名を対象にCampylobacter腸炎について調査したところ, C.jejuniの検出頻度は他の腸管病原菌のそれをしのぎ, 小児で13.6%, 成人で8.3%で, 検出された腸管病原菌の39.5%を占めた.また, 正常妊産婦および新生児6,815名についての調査では, それらの大便中における本菌の出現頻度は1%以下であった.Campylobacter腸炎患者の年齢分布では, 10歳以下の小児が約半数を占め, 一見小児のほうに多い感が与えられたが, 腸炎で受診する患者には小児が多く, このことが本腸炎の分布が見かけ上小児に偏るかもしれないことが考察された.性別分布では女性よりも男性に多い傾向があった.
臨床症状では下痢, 腹痛, 発熱が主徴で, 他の腸炎と区別されるべき特徴的な症状は認められなかったが, 多くの例で下痢便に血液を混じ, その直接鏡検で好中球およびCampylobacterの特徴的形態が観察されることは, 本腸炎の診断に価値ある所見として強調された.また, 回復期における血中抗体価の著明な上昇および長期間の排菌も他の報告と同様, 本腸炎の特徴の一つとして確認された.
分離されたCampylobacter 161株は, そのenzyme profileで多少の菌株間の相違が認められたが, 2株を除いてすべてC.jejuniと同定された.馬尿酸加水分解で例外性状を示した2株はCcoliに該当する菌株と思われるた.
なお, Campylobacterの分離に, Skirrow寒天とButzler寒天 (変法) とを1年間にわたって比較したところ, 後者のほうが選択性および分離率において前者よりもすぐれていた.

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