感染症学雑誌
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食品によるA群T12型溶血連鎖球菌咽頭炎集団発生の疫学的研究
奥山 雄介
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1982 年 56 巻 12 号 p. 1173-1185

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抄録

本報告は, 学校給食が起因となったA群溶連菌による咽頭炎集団発生の疫学的研究である.
この集団発生は, 1969年7月, 埼玉県比企郡都幾川村大椚小学校 (在籍107名) 及び中学校 (在籍97名) に発生した.
1) 患者発生は, 17日4名, 18日44名, 19日15名, 20日6名であり, 発生のピークは18日の44名で単一曝露感染を示した.
2) 患者数は, 204名中69名 (33.8%) であり, その主な臨床症状は, 発熱 (94.2%), 頭痛 (91.3%), 咽頭痛 (66.7%), 嘔気 (26.0%) 及び腹痛 (23.1%) であった.
3) 特に症状の重い7名の患者の咽頭培養検査を行ったところ, そのうちの6名からA群T12型溶連菌が分離された.
4) 小学校に冷蔵保管されていた7月16日から18日までの学校給食について細菌学的検査を行ったところ, 17日給食の “焼そば” からA群T12型溶連菌が分離された.このことは, 学校給食の “焼そぼ” が原因食品であることを示唆した.
5) 8月8日, 小学生の咽頭培養検査とASO価及びT抗体測定を行った.その結果, A群T12型溶連菌が94名中10名 (10.6%) から分離された.ASO価166単位以上の比率は, 患者群では92.3%であったが, 健康者群では38.5%であった.T抗体は93名中29名 (31.2%) 保有していたが, そのうちの1例のみがT12型抗体を持っていた.
6) 発生6ヵ月後の両校児童及び生徒のA群溶連菌保菌状況は, 小学生26.7%, 中学生35.9%であり, A群溶連菌分離株61は, T12型 (88.5%), T4型 (1.6%) 及び菌型不明 (9.8%) であった.小学生104名及び中学生90名のASO価分布は, 両校において166単位にピークを示した.6ヵ月間でT12抗体を獲得した小学生は, 11例 (18.6%) 増加した.
以上の事実から, この集団発生は, 食品に起因したA群T12型溶連菌による咽頭炎と考える.

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