感染症学雑誌
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Nutritionally variant streptococcusによる感染性心内膜炎の1例
藤田 信一松原 藤雄野田 八嗣
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1982 年 56 巻 8 号 p. 705-710

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抄録

起炎菌としてはまれないわゆるnutritionally variant streptococcusによる感染性心内膜炎の1例を経験した.症例は45歳の男性で, 昭和55年11月l1日発熱を主訴として入院した.入院後に行った5回の血液培養からStreptococcusが分離された.本菌はTrypticase soy agarやHeart infusion agarを基礎とした血液寒天ではStaphylococcusやその他の菌の周囲にのみ発育した.また, 分離菌はpyridoxal HCIやL-cysteineを培地に添加することにより発育が促進された.血中分離菌に対するpenicillin G (PCG) の最小発育阻止濃度と最小殺菌濃度はそれぞれ0.025μg/ml, 6.25μg/mlであった.
本症例の心内膜炎はPCG1日2,000万単位の持続点滴により治癒した.抗生剤投与中の血清殺菌能は32倍であった.入院後の心カテーテル検査により心室中隔欠損と大動脈弁閉鎖不全の存在が確認された.なお, 発病4ヵ月後に大動脈弁置換術が行われ, この時大動脈弁に4個のvegetationを認めたが細菌培養は陰性であった.

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