感染症学雑誌
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ムンプスに対する中和抗体測定の簡便法とその疫学への応用について
春山 長治
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1984 年 58 巻 3 号 p. 173-180

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抄録

ムンプスウイルスのCPEによる定量および中和試験のマイクロタイター化を試みた. また, 本方法を用いて中和抗体価を測定し, HI法, セミマイクロプラック中和法との抗体価の比較検討を行った.さらに, 小児における抗体保有状況を調査した.
使用したE-Yウイルス株はVero細胞においては明瞭なCPEが観察され, 培養4日目でウイルス力価を判定することが出来た. ウイルスは0.11%BA (bovine serum albumin) 添加Eagle-MEM培養液中で安定性を示した. ウイルスと抗血清との反応を37℃, 2時間行ったときの中和抗体価は最も高い値を示した. また, 標準抗血清を使っての再現性はきわめて良好であった. 抗体価比較ではセミマイクロプラック中和法とよく相関し, HI法よりは感度が高かった. 小児の抗体保有調査では幼稚園および小学校低学年の年齢層の間に, 多くの小児がムンプス感染を受けることが示唆された. このマイクロCPE中和法を用いれば細胞染色によって肉眼でもCPEが容易に判定出来, 一度に多数の検体を簡便に, しかも, 再現性良く測定出来ることなどから, HI法にかわってムンプスの血清疫学調査に有用と考える.

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