感染症学雑誌
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小児科臨床からみたB型インフルエンザの流行とモノクローナル抗体によるHA抗原分析
菅谷 憲夫三田村 敬子武内 可尚佐野 はつの根路銘 国昭石田 正年
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1984 年 58 巻 3 号 p. 181-186

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抄録

1982年初頭に, B型インフルエンザの中規模の流行があり, 全国で168万人の患者発生が報告された. この流行に際して, 小児科臨床現場でのB型インフルエンザ感染の実態を明らかにする目的で, ウイルス分離と入院患者血清によるHI試験を実施した. その結果, 入院患者から2株, 外来患者から8株のB型ウイルスが分離された. HI試験により, B型インフルエンザ感染が証明された入院患者は9名あり, インフルエンザ流行期間中には, 感染症の入院の少なくとも約20%が, B型ウイルスが原因になったと考えられた. 9名の入院患児は, 5-6歳以下のワクチン未接種の低年齢層であり, 不明熱を主訴とした例が多くみられた. 分離ウイルスのHA抗原分析を, フエレット感染血清により実施したところ, B/Kanagawa/3/76に近いと考えられる結果を得た. ところが, モノクローナル抗体を用いると, B/Kanagawa/3/76や, ワクチン株であるB/Singapore/222/79とは相当に異っている事が明らかとなり, ここに流行の一因があると思われた. 今後ワクチン株の選択には, モノクローナル抗体などを用いた緻密なデータを, 基礎にする必要性が示唆された.

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