感染症学雑誌
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清水港におけるネズミの内外寄生虫, 細菌の汚染状況並びに抗Hantaan virus抗体の保有状況について
鈴木 荘介島村 博滝聞 一成田村 俊秀庄司 宏堀田 進倉田 毅青山 友三T. F. TSAI李 鏑注
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1984 年 58 巻 3 号 p. 203-213

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抄録

1981年から1982年の期間, 清水港港湾区域において捕獲されたネズミについて, 内外寄生虫および細菌の保有検査並びに間接蛍光抗体法による抗Hantaan virus (以下HVと略記) 抗体保有調査を行った結果, 次の成績を得た.
捕獲ネズミ164頭の種類別では, Rattus norvegicus 153頭 (93.3%), Rattus 3頭 (1.8%) およびMus musculus8頭 (4.9%) であった. 外部寄生虫ではXenopsylh cheopisが検出され, ケオプス指数は0.21であった. 内部寄生虫ではAngiostrongylus cantonensisが14頭 (12.7%) に検出された. 細菌学的保菌検査では2頭にSalmonella (S. nagoya および S. senftenberg), 5頭にyersinia enterocoliticaが検出されたが, その他の菌は検出されなかった. HV抗体陽性ネズミはR. norvegicus 153頭中35頭 (22.9%) にみられた. その抗体価の内訳は強陽性5例 (3.3%), 中等度陽性9例 (5.9%), 弱陽性21例 (13.7%) であった. これらネズミの捕獲場所をA地区 (埠頭), B地区 (魚市場), C地区 (埠頭), D地区 (埠頭近傍埋立地) およびE地区 (工場) に分けてみると, ネズミが高い密度で群棲していたD地区において, 抗体陽性群が最も高率 (42.5%) であった. 季節別分布としては, 初夏と冬期との間で差が認められなかった. ネズミからのHV分離並びに臓器内抗原の検出は試みた全例において不成功であった. 清水港入港船舶には約2.6%の割合にねずみ族の新しい証跡が認められた.
以上の結果から, 清水港におけるネズミはかなりの程度にHV汚染をうけていると考えられる.

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