感染症学雑誌
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コレラ死菌および生菌の経口投与によるIgE抗体産生の抑制
駒形 安子
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1984 年 58 巻 4 号 p. 318-326

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抄録

経口投与されたある種の抗原は腸管壁において抗体産生細胞に刺激を与えると考えられているが, その機序は明らかでない. われわれはコレラ菌を感作抗原として, その経口投与によってDNP-コレラ菌体の抗体産生にどのような影響を与えるかを検討した. コレラ生菌及び死菌をBALB/cマウスに1~4回経口感作し, 最終感作から3日目にDNP-全菌体を抗原として腹腔内に注射し, その7, 14, 21日後の血中のIgE, IgM, IgGおよびvibriocidal抗体価を測定した. 生菌2~4回感作群および死菌3, 4回感作群においてIgE抗体産生の抑制のみがみられた。また最終感作3日後のマウスリンパ球の移入実験では, 生菌4回感作群と死菌3, 4回感作群の脾臓およびバイエル板細胞が, 生菌1~3回感作群のバイエル板細胞がIgE抗体産生を抑制した. 生菌4回感作マウスおよび死菌4回感作マウスの脾臓とバイエル板細胞をそれぞれナイロンファイバーカラム法で, T cell rich画分 (TrF) ならびにB cell rich画分 (BrF) に分けて移入すると, 生菌感作群の脾臓のBrF, バイエル板 (PP) のTrF, 死菌感作群の脾臓のTrFおよびBrF, そしてPPのBrFによってIgE抗体産生が抑制された.
更に生・死菌を4回感作したマウスの脾臓およびPP細胞を抗マウスThy1, 2抗体で処理した細胞を移入すると死菌感作群の脾臓およびPP細胞と生菌感作群のPP細胞でIgE抗体産生が抑制された。
IgE抗体以外では, IgM抗体産生が死菌感作マウスの脾臓のBrF, PPのTrFおよびBrFで僅かに増強され, vibriocidal抗体産生が死菌感作マウスの脾臓のTrFおよびBrF, 生菌感作マウスのPPのBrFで増強された.
以上の結果からコレラ菌で経口感作すると, 特に抗DNP-IgE抗体産生に対する抑制が顕著に見られたが, また感作抗原の強さや性状によって異なった細胞に影響を与えていることが示唆された.

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