感染症学雑誌
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本邦において分離され始めた4′, 4′′-アデニリル転移酵素を産生するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の分離状況について
野々口 律子
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1984 年 58 巻 7 号 p. 569-582

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抄録

本邦において, アミノ配糖体薬修飾酵素の4′, 4′′-アデニリル転移酵素 (4′, 4′′-AAD) を産生するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS) が見い出された機会に, これらのCNSが検出され始めた極めて初期のある一定期間に区切って, 病院内外におけるこれらの菌の検出状況を調べ, hospital strainとしての意義について検討を行った.
1. 検索期間中に収集したCNSより無作為に抽出した299株 (入院由来株156株, 外来由来株143株) を対象とした. 入院由来株では, 尿 (28.2%), 喀痰 (28.8%), 便 (25.6%) からの検出が大部分を占め, 外来由来株では尿が最も多く (46.2%) 次いで便 (22.4%) 耳漏 (16.1%) の順であった.
2. ディスクによる感受性検査で, kanamycin, gentamicin, amikacinのいずれかに耐性を示す菌は, 入院由来で96株 (61.5%), 外来由来で40株 (28.0%) であった.
3. それらのアミノ配糖体薬 (AGs) 耐性菌のうち, 4′4′′-AADを産生すると推定される菌は, 入院由来で17株 (10.9%), 外来由来で9株 (6.3%) 検出されており, それらを菌種別にみると入院, および外来由来とも各1株を除いてすべてS6pi Semisisであった. これらの菌株のAGS感受性成績は, tobramycinとKMには高いMICを示し, AMKに対しても6.25-25μg/ml程度のMICを示したが, GMには感性であった.
4. AG s耐性菌の中, 最も検出頻度の高いGM耐性菌 (2′-リン酸転移酵素と6'-アセチル転移酵素を産生すると推定される菌) は, 入院由来株の方に多く, いわゆるhospitalstrainとしての裏付けがなされたが, 4′, 4′′-AADを産生すると推定される菌の分離は, 入院と外来由来株との間で分離率に有意差は認められなかった. そのことから, 現時点では4′, 4′′-AAD産生菌はhospital strainとは言い難いが, すでに病院内外に広く分布し始めていることから, 今後の薬剤の使用方法によつては, 充分にhospital strainとなり得ることが推測された.

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