感染症学雑誌
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DL-8280の前立腺液内, 前立腺組織内移行濃度, ならびに急性前立腺炎に対する臨床効果の検討
原 三信中洲 肇
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1984 年 58 巻 9 号 p. 921-931

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抄録

新規経口合成抗菌剤DL-8280の前立腺液内および前立腺組織内への移行濃度を測定し, その結果をふまえてDL-8280を急性前立腺炎に投与してその臨床効果を検討したので報告する.
前立腺液内の薬剤濃度は健常男子ボランティア6名 (20歳代3名, 50歳代3名) を対象として, DL-8280を300mg経口投与後, 前立腺マッサージによって得られた前立腺液内の濃度を測定した. その結果, 20歳代男子の本剤投与後1, 2, 3時間各群間の比較を行うと, 前立腺液内へのDL8280の移行は血清へのそれよりもやや遅れておこり, その値は投与後3時間群で平均1.82μg/mlであった.
50歳代男子は本剤投与2時間後の測定のみ行ったがその値は2.78μg/mlで, 20歳代男子の平均1.50μg/mlに較べてやや高値を示した.
前立腺組織内の薬剤濃度は前立腺肥大症患者を対象として, 術前にDL-8280を300mg経口投与後, 経尿道的前立腺切除術 (以下TUR-Pと略す) によって採取した前立腺組織内の濃度を測定した. その結果, 本剤投与後1, 2, 3時間群のいずれにおいても血清濃度と相関した平均2-3μg/gの組織内移行が認められた.
以上の結果よりDL-8280の細菌性前立腺炎に対する臨床効果を期待し, 急性前立腺炎9症例について臨床的検討を行い, 3日目判定 (5例) で有効率80%, 7日目判定 (9例) で有効率100%, 14日目判定 (7例) で有効率100%の結果を得た. 副作用は1例に一過性の皮疹をみたのみであった.

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