1986 年 60 巻 10 号 p. 1114-1118
毒素原性大腸菌食中毒患者から採取した血清240検体について, 原因菌菌体, LTおよびCFAに対する抗体価の推移を経日的に調べた.原因菌菌体およびLTに対する抗体価を幾何学的平均でみると, 発症から徐々に上昇していき, 発症21~30日目に最高の値となり, 以後は減少していった.原因菌菌体に対する抗体価はLTに対する抗体価に比較して上昇が著明である点を除くと, 両者の経日的パターンはよく似ていた.CFAに対する抗体については, 発症1~5日目の患者および健康者のほとんどが保有していなかったが, 発症31~40日目の患者の約60%が陽性であった.また, 原因菌菌体に対する抗体価とLTに対する抗体価の両者の間には相関関係がみられたが, 原因菌菌体とCFA, LTとCFAのおのおのに対する抗体価の間には相関関係は認められなかった.