感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
腸チフス・パラチフスの肝障害の検討
町井 彰新田 義朗相楽 裕子瀬尾 威久松原 義雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 60 巻 2 号 p. 145-151

詳細
抄録

腸チフス, パラチフスの経過中に肝障害が出現することは以前から知られているが, 1979年から1983年の期間の当院に入院した腸チフス27例, パラチフスA9例についての肝機能検査成績および一部の症例について施行した肝生検による肝組織所見の検討を行った.肝機能検査成績の異常はおおよそ14病日頃から出現し, ほぼ30病日に正常値に復した.黄疸の出現した症例は少なく, 血清ビリルビンが2mg/d1を越えた症例は2例に過ぎない.GOT, GPTはそれぞれ72.2%, 63.9%に異常例がみられた.異常値の平均は腸チフスではGOT242.91U/1, GPT212.61U/1, パラチフスAではGOT119.31U/1, GPT111.31U/1であった.最高値は腸チフスのGOT7801U/1, GPT6601U/1であった.LDHは94.4%, ALPは63.9%, またγ-GTPは41.7%にそれぞれ異常値がみられた.腸チフス3例, パラチフスA2例に肝生検を行った.肝組織所見は肝細胞のfocal necrosis, 門脈域の軽度の拡大, Kupffer細胞の動員および肝細胞索の二層性, 核の二核性などの肝細胞の再生像などがみられ, またtyphoid noduleは1例に認められた.これらはnon specific reactive hepatitisの所見であった.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top