感染症学雑誌
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HBV感染者におけるデルタ抗体の検討
田村 偉久夫市村 宏栗村 統栗村 敬
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1987 年 61 巻 1 号 p. 72-78

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抄録

呉市および呉市近郊在住のB型肝炎ウイルス (HBV) 感染者におけるデルタ抗体 (anti-delta) の検索をRIA法により行い, 以下の成績を得た.
1) HBV感染者321例中18例 (5.6%) にanti-deltaが検出された.B型急性肝疾患では劇症肝炎5例中2例 (40.0%), B型急性肝炎36例中2例 (5.6%) に検出された. B型慢性肝疾患では200例中14例 (7.0%) に検出されたが, 無症候性HBVキャリア80例では全く検出されず, 両群の間のanti-delta検出率には有意の差が認められた.
2) HBVキャリア280例のanti-delta検出率を地域別に検討した.東部地区は92例中9例 (9.8%) にanti-deltaが検出され, 他の3地区の検出率 (2.7%) に比べて有意に高かつた. また, 東部地区のB型慢性肝疾患のanti-delta検出率は, 無症候性HBVキャリアの検出率に比して有意に高率であった.
以上の成績より, 本邦のHBVキャリアにおいてもデルタ肝炎ウイルス (HDV) が肝疾患を発症させる一つの要因であり, 呉市および呉市近郊の東部地区のB型慢性肝疾患患者にHDVが集中的に伝播していることが示唆された.

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