感染症学雑誌
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Mycoplasma pneumoniae肺感染実験系における気管支肺胞洗浄液の細胞動態
矢野 敬文
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1987 年 61 巻 1 号 p. 87-100

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抄録

幼弱および成熟ハムスターを用いて実験的Mycoplasma pneumoniae (M.pn.) 肺炎を経気道注入法により作成し, 細胞レベルよりみたM.pn.感染動態を解明するためM.pn.の動向, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中の細胞成分と肺組織像を経時的に対比検討し, 以下の結果を得た.
1.血清抗体価は全例に上昇が認められ, 成熟ハムスター群の方が早期に上昇傾向を示した.
2.M.pn.の分離成績はtrachea, BALFともに感染後7日目に最大に分離され, 幼弱ハムスター群と成熟ハムスター群間にはその分離成績に差はみられなかった.
3.BALF中の総細胞数は感染後7日目に最も増加し, BALF細胞成分は感染後7日目に好中球, マクロファージ, 感染後21日目にリンパ球の増加がみられ, 成熟ハムスター群の方がBALF中の総細胞数は有意に増加が認められた.
4.肺組織像は感染後7日目に顕著で, その病理学的所見は, 単核細胞浸潤を背景とした好中球の浸潤を伴なう気管支炎, 血管周囲炎, 胞隔炎で成熟ハムスター群の方が肺病変の程度も著明であった.
以上の結果より, 経気道注入による感染方法は従来の報告にない極めて良好な実験モデルを作成できることが判明した.またM.pn.肺炎の病変形成には生体の免疫反応が重要であり, 特に, 感染初期にみられた一過性の好中球の出現はその病変形成に密接な関連性を有していると考えられる.

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