感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
レイ菌臨床分離株のプラスミドの分析, 薬剤耐性及び生化学的性状との関連について
守屋 哲博天児 和暢
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 61 巻 10 号 p. 1133-1140

詳細
抄録

レイ菌の尿路分離株及び呼吸器由来株についてプラスミドの存在を調べた. 尿路由来株では62株中34株 (69%) がプラスミドを保持していたのに対し, 呼吸器由来株では74株中26株 (35%) であった. 1株中に見られるプラスミドの種類は1種から6種まで分布しており, それらの分子量は2.0メガダルトンから60メガダルトン以上まで多様であった. レイ菌の薬剤感受性をトリディスク法で調べると, 大部分の尿路由来株はErythromycin, Cephaloridine, Ampicilin, Sulfisoxasole に対し耐性を示し, Kanamycin, Tetracycline, Gentamycin, Cephoxitin, Nalidixic acid に耐性を示す株も多く見られた. しかし, 呼吸器由来株は, Erythromycin, Cephaloridine, Sulfisoxasole に対し耐性を示したが, 他の薬剤には感受性であった.
尿路由来株から抽出したプラスミドで大腸菌を形質転換すると, 大腸菌は数種の薬剤に対し耐性を示すようになった. 尿路由来の約60%に相当する株から単離したプラスミドが大腸菌にAmpicilin, Kanamycin, 又はGentamycin耐性を与えたが, 呼吸器由来株からのそれは1種のみが大腸菌にAmpicilin耐性をもたらした.
これらの結果から, 尿路由来株と呼吸器由来株では薬剤耐性に著しい差があること, 尿路由来株の示す耐性の一部はプラスミドの存在に依存していることが判った.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top