感染症学雑誌
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出生時の交換輸血によりキャリアー化し, 早期にHBs抗原が陰性化した肝硬変の1例
石原 圭子林 純梶山 渉石橋 大海柏木 征三郎
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1988 年 62 巻 6 号 p. 608-612

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抄録
症例は出生時, 母児間ABO型不適合のため交換輸血を受けた女性で, 家族内にはHBs抗原陽性者は1名も存在せず, 患者はこの時B型肝炎ウイルスに感染し, キャリア化したと考えられた.16歳でHBs抗原陽性, HBe抗原陰性, HBe抗体陽性, HBs抗体陰性, HBe抗体陽性と判明し, 肝生検にて慢性活動性肝炎と診断された.経過観察中, 19歳でHBs抗原が陰性となり, 高値を示していたHBc抗体価は著明に低下した.22歳でHBs抗体が陽性となったが, 肝機能異常は持続し, HBs抗原が陰性化して7年後の26歳には, 臨床的に肝硬変への進展が確認された.慢性肝炎の段階ではHBs抗原が陰性化した後は肝炎は鎮静化するとされ, また一般にHBs抗原の陰性化は比較的高齢者に多く, 20歳以下での自然陰性化は極めて少なく, まれな症例と思われたので, 報告する.
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© 日本感染症学会
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