感染症学雑誌
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Protein Aを用いたIg-G吸収前後のHI抗体価による日本脳炎, デングウイルス感染状況の推定法
宮西 邦夫
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1988 年 62 巻 7 号 p. 628-635

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抄録

ProteinAによるIg-G吸収法を用いた日本脳炎, デング両ウイルスの新鮮感染状況の推定法の有用性を検討するため, タイ国内一地域の人血清481検体を用い, 吸収前および吸収後のHI抗体価を測定した.
被検血清0.3ml中のIg-G抗体は, Protein Aを含む黄色ブドウ球菌 (CowanI株) の菌体0.05gにより, ほぼ完全に吸収出来た.
Ig-G吸収前の日本脳炎, デングウイルスに対する抗体陽性率は, 各々77.3%, 77.5%であり, 吸収後のIg-M抗体陽性率より, 初感染, 重感染を含めた新鮮感染者の割合が, 各々12.3%, 19.8%であった.
年齢別, 地域別の抗体陽性率から, 新鮮感染率は吸収前の陽性率に必ずしも比例しておらず, 吸収前の抗体価が160以下の低い者の中にも日本脳炎とデングウイルスのIg-M抗体陽性者が各々4.3%, 22.7%認められた.
さらに, 吸収前に両ウイルスに陽性であった336名の内, 日本脳炎ウイルス又はデングウイルスのいずれかの特異Ig-M抗体陽性者の割合は22.9%(各々23名, 54名) であり, 両ウイルスの抗体陽性者割合も10.4%と低かった. 以上の成績から, Protein AによるIg-M抗体の検出法は, 両ウイルスの新鮮感染状況の推定のみならず, 原因ウイルスの鑑別診断においても有用であることが示唆された.

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