感染症学雑誌
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フルオロキノロン系抗菌薬に対する耐性菌の動向
紺野 昌俊大成 滋伊藤 直子生方 公子橋本 ゆかり川上 小夜子
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1988 年 62 巻 7 号 p. 641-651

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抄録

帝京大学医学部附属病院中央検査部細菌検査室で, 主に1986年10月から1987年3月までの期間に扱った臨床検査材料を対象とし, その中から検出された各種細菌中に占めるフルオロキノロン (QNLs) 耐性菌の割合を調べた. また, それらの耐性菌について, norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX) およびcipronoxacin (CPFX) に対する感受性を測定した. 得られた成績は下記の通りである.
1. 分離菌株中のQNLs耐性菌の割合が高率であったのはS. auruesの13.0%, S. marcescensの45.8%, およびP. aeruginosaの8.7%であった. 他の腸内細菌ではいずれも5%以下であった.
2. それらのQNLs耐性菌は, S. aureusでは既に種々の検査材料から検出されているのに対し, S. mazcescensP. aeruginosaでは大多数が尿由来株であった.
3. S. aureusにおけるQNLs耐性菌の大多数は, メチシリン耐性菌がさらにQNLsにも耐性化したものであった.
4. S. marcescensにおけるQNLs耐性菌も多剤耐性菌が多く, β-ラクタム系薬やアミノ配糖体薬の全てに対して耐性を示す菌株が約半数を占めていた.
5. 上記の2菌種に比べ, P. aeruginosaのQNLs耐性菌は, β-ラクタム系薬あるいはアミノ配糖体薬中の1薬剤には感性を示す株が多かった.
6.QNLs耐性菌の上記3薬剤に対する感受性成績は, 感性菌の示すMIC値とは明らかに異なっており, しかもそれらの耐性菌は6.25μg/ml前後の中等度のMICを示す菌株群と, 100μg/ml程度のMICを示す菌株群とに区別された. また, 各薬剤間には相関性のあることを認めた.

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