感染症学雑誌
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妊婦の風疹抗体保有率ならびに風疹ワクチン歴, 既往歴について
廣澤 浩中村 幸義渡辺 言夫米山 国義伊達 禮次
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1988 年 62 巻 7 号 p. 652-656

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抄録

1977年8月から定期接種に組み込まれた風疹ワクチンの接種を受けた女子が妊娠適齢に達したので, 妊婦の風疹抗体保有率を求めるとともに, 問診による風診既往歴および風疹ワクチン歴と抗体保有の実態を調査した. さらに, 罹患時期およびワクチン接種時期から抗体測定までの期間と抗体価について検討した. 対象とした妊婦は382名で, 年齢は18歳から42歳にわたった. このうち, 1962年4月2日以後に出生した定期接種対象者が63名含まれていた. 抗体保有者は301名, 78.8%の抗体保有率で, 年齢別では, 定期接種対象者の抗体保有率が92.1%と最も高く, 1955年1月1日から1962年4月1日までに出生し, 1986年現在, 妊娠に最も適齢の者の抗体保有率が73.4%と最も低かった. 既往歴およびワクチン歴と抗体保有の実態は, ワクチン接種者は全員抗体を保有していたが, 既往歴と抗体価が一致したのは61.2%で, 問診による風疹既往歴の判断は困難と思われた. しかし, 定期接種対象者の一致率は90. 6%と高く, ワクチン接種が始まってから社会的に風疹に対する認識が高まったことを示していた. 風疹罹患およびワクチン接種から抗体測定までの期間と抗体価についてみると, 罹患群では, 測定までの期間は2年から31年で, 抗体価は8倍から256倍であった. ワクチン群では, 期間は5ヵ月から10年で, 抗体価は16倍から128倍にわたり, 接種後9年以上を経た2名の抗体価はいずれも64倍であった.

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