1988 年 62 巻 7 号 p. 675-681
長期人工呼吸患者は緑膿菌などによる難治性の気道感染を合併しやすく, weaningの妨げとなる. 我々は, これらの患者に気道感染の治療を目的としてEMの投与を試み, 有効と考えられた4症例を経験したので報告する.
症例1: 70歳, 男. 既往に肺結核による両肺上葉切除術.胃癌手術後, 呼吸不全となり人工呼吸. P. mattophitiaによる気道感染合併.EM投与後, 経過良好でweaningでき, 退院. 症例2: 74歳, 女. 気管支喘息重積発作のため人工呼吸. P. aeruginosaによる気道感染合併. EM投与後, 経過良好. 気管切開孔閉鎖し退院. 症例3: 56歳, 男. 既往に肺結核のため人工気胸術. 急性増悪きたし人工呼吸. P. aeruginosaによる気道感染合併. EM投与後, 経過良好のため気管切開孔閉鎖し退院. 症例4: 50歳, 男. サルコイドーシスのステロイド治療中アスペルギールス, 結核菌, 緑膿菌の呼吸器感染合併し, 呼吸不全となり気管切開. 多種抗菌剤とEM投与. 薬熱にて抗緑膿菌剤中止後も経過良好のため気管切開孔閉鎖し退院.
以上, 4症例は, 慢性呼吸器疾患の気管切開患者の気道感染の治療にEMが有用であることを示唆する症例と考えた.