感染症学雑誌
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室戸地方に発生した紅斑熱リケッチア症: 23症例についての臨床的疫学的検討
船戸 豊彦北村 嘉男川村 明廣内田 孝宏
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1988 年 62 巻 9 号 p. 783-791

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抄録

室戸地方に発生した紅斑熱リケッチア症2症例の臨床経過, 検査成績, 治療について記載し, さらに昭和58年10月より3年間に経験した23症例の臨床的疫学的検討を行なった. 患者は全年齢層に分布し, 性差はみられず, 発生時期は4月から10月であった. ベクターは明らかにされていないが, 感染から発症までの潜伏期間は4-7日であった. 高熱 (38-40℃) と紅斑はすべての症例にみられ, 熱型は弛張熱を示すものが多く, 紅斑は米粒大から大豆大で, 体幹・四肢に現われ, 治療の遅い例では皮下出血性となるものがあった. 一部には手掌に発疹を認めた. 刺し口は症例の半数にあり, 所属リンパ節の腫脹は2例にみられたが, 全身のリンパ節腫脹は認められなかった. その他の症状として, 食思不振, 頭痛, 嘔吐, 関節痛, 悪寒戦慎, 全身倦怠感, 血圧低下, 精神障害等が認められた. CRPは強陽性を示すものが多かった. 白血球数はほぼ正常値内にあったが, 5,500/mm3以下が半数例にみられた. 白血球像は急性期には好中球の増加とリンパ球の減少, 回復期に好中球の減少とリンパ球の増加がみられ, 好酸球は消失する例が多かった. 血清トランスアミナーゼは12例中9例に軽度乃至中等度の上昇をみた. Ricketts montmaを抗原する蛍光抗体法で, すべてIgGおよびIgM抗体価の上昇を示した. 治療は発症後1-7日で開始され, テトラサイクリン系薬剤が有効であり, 2-5日で解熱し, 臨床症状は改善した. 死亡例なく, 後遺症もみられなかった.

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