感染症学雑誌
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急性副睾丸炎におけるChlamydia trachomatisUreaplasma urealyticumの病原的意義
伊藤 康久
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1989 年 63 巻 4 号 p. 293-304

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抄録

急性副睾丸炎におけるC. trackomatisU. urealyticumの病原的意義を検討する目的で, 58例の急性副睾丸炎患者について検討を行った.
1) 基礎疾患を認めない急性副睾丸炎患者38例中16例 (42.1%) に尿道からC. tmckomatisが分離されたが, 細菌尿は1例も認められなかった. 尿道からC. tmckomatisが分離された10例中4例に副睾丸吸引液からもC. tmckomtisを分離した. 一方, 前立腺肥大症などの基礎疾患を有する20例の急性副睾丸炎患者のうち11例に尿路感染症の合併が認められたが, 尿道からC. trackomatisは分離されなかった.
2) Micro-immunofluorescence法により血清中の抗C. trackomatis抗体の測定を21症例に行った. IgG抗体の陽性率はC. trackomatis感染症例では88.9%(8例/9例), 非感染症例では25%(3例/12例) であった. IgM抗体は全例陰性であった.
3) U. urealyticumは急性副睾丸炎患者の尿道から15例 (25.9%) に分離されたが副睾丸吸引液からは1例も分離されなかった.
以上の結果より, C. trackomatisは基礎疾患のない急性副睾丸炎の主要起炎菌の一つと思われた. しかし, U. urealyticumの急性副睾丸炎における病原的意義については明らかにできなかった.

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