感染症学雑誌
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東京都で1966~1986年にヒトから分離されたサルモネラの血清型, 薬剤耐性, および接合性Rプラスミド
堀内 三吉稲垣 好雄中谷 林太郎後藤 延一吉田 洋子楠 淳伊藤 武大橋 誠
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1989 年 63 巻 4 号 p. 352-362

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抄録

1966~86年の21年間に東京都で発生した急性胃腸炎患者および散発下痢症患者から分離されたサルモネラ4,739株を1966~73年 (前期), 1974~79年 (中期), 1980~86年 (後期) に分け, 血清型別分離頻度 (中, 後期のみ), 薬剤耐性率, 接合性Rプラスミド保有率について年次別推移を調べた. 血清型別分離頻度は, 中期ではS. typkimurium (34.3%), Infantis (5.6%), Panama (4.9%), 後期ではS. typkinmrium (31.7%), Paratyphi B (9.4%), Litchfield (7.3%) の順に高かった.前期における薬剤耐性率の平均は86.9%で, その多くはSM耐性 (83.0%) で, 次いでTC耐性 (30.7%) であった. しかし, 中期の平均耐性率はSM耐性菌が1974年を境に激減したために53.3%に, また, 後期にはさらに減少して39.4%にまで低下した. 前期におけるAP, CP, KM耐性は, それぞれ3.2, 1.8, 4.7%と低かったが, 後期ではそれそれ12.3, 9.9, 10.4%に増加した. 前者における接合性Rプラスミド保有菌株の割合は, 1973年には全分離菌株の57.8%にまで達した. その後, 中期には耐性菌の減少に伴って低下し, 1981年には6.7%となった. しかし, 1981年を境とし, 後期になると再び緩やかな増加を示した. 血清型別接合性Rプラスミド保有率は, 中期, 後期を通してS. typkimuriumが高かった. 接合性Rプラスミドの耐性パターンは前期ではTC単剤耐性型が54.1%と多かったが, 経年的に多剤耐性化し, 後期になるとAPCP KM SA SM TCの6剤耐性型が第1位 (22.1%) になり, 一方, TC単剤耐性型は第13位 (2.2%) に後退した.全調査期間を通じてみると, 血清型別分離頻度はS. typkimuriumが最も高く, また, 全分離株の薬剤耐性率は57: 5%, 接合性Rプラスミド保有率は21.1%であった.

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© 日本感染症学会
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