1990 年 64 巻 2 号 p. 188-194
当院にて昭和59年10月から水痘ワクチン市販直前の62年3月までに水痘ワクチン接種を受けた一般健康小児を観察対象とし, その中での自然水痘発症例について調査した.この期間に水痘ワクチン接種を受けた16歳未満の者は延べ463名, 接種前抗体陰性者のうち接種後に抗体上昇を認めた者は276名であり, 抗体獲得率は83.1%であった.ワクチン接種後4週間以上経過して発疹が出現し, 水痘と診断された小児が35名いた.そのうち, 1名は接種前の抗体が陽性であり, また4名は接種後抗体の上昇がみられなかった.したがって, ワクチンにより抗体上昇のあった276名における発症者は30名 (発症率は10.9%) であった.しかし再接種をして抗体を獲得した27名を加えると303例中発症者30例であり, 発症率は9.9%となった.帯状痕疹を発症した例はなかった.
なおワクチン接種後の発症例での症状はほとんどが軽症ないしごく軽症であり, 水痘の発症を完全には抑制できないとはいえ, 水痘ワクチンは有効であると判断された.