水痘帯状痕疹ウイルス (VZV) 肺炎が直接死因となった全身性VZV感染症の2例を経験し, その病理組織像を中心に報告した. 症例1は48歳, 男性, 症例2は57歳, 男性で, 原疾患はそれぞれ成人T細胞白血病と急性リンパ性白血病だった. 2例とも出血性凝固壊死巣が両肺びまん性に散在し, 胸膜炎を伴っていた. VZV感染に特徴的なCowdry A型およびfull型核内封入体は気管支および肺胞上皮細胞だけでなく, 間質の線維芽細胞, 血管内皮細胞, 気管支腺細胞や胸膜細胞にも認められた. VZVは肺以外にも, 肝, 脾, 膵, 腎, 副腎, 食道, 胃, 小腸, 前立腺など多数の臓器に感染していた. また2例とも肺にはCMVが重複感染し, さらに, 症例1では胃カンジタ症, 症例2ではアスペルギルス肺膿瘍とカンジダ肝膿瘍を合併していた.
2例とも剖検組織の免疫組織染色によりVZV抗原を証明したが, 血清のウイルス抗体価は有意の上昇を示さなかった. したがって, 細胞性免疫能低下の著しい宿主に急速に呼吸困難と血疾が出現し, 胸部X線像で両側に境界不鮮明な多発結節状陰影と胸水貯留を認めた場合には, VZV肺炎を疑い, 喀疾, 胸水さらに経気管支肺生検組織や気管支肺胞洗浄液からウイルスの分離とウイルス抗原の検出を行い, adenocine arabinoside (Ara-A), acyclovirなどの抗ウィルス剤を投与すべきと思われた.
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