感染症学雑誌
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64 巻, 2 号
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  • 二重盲検法による比較試験
    片山 直之, 赤塚 美樹, 池田 靖, 市原 正智, 大野 竜三, 奥村 雅男, 小野 芳孝, 小原 寛治, 影山 慎一, 加藤 幸男, 北 ...
    1990 年 64 巻 2 号 p. 149-161
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    液状静注用人免疫グロブリン製剤G425と抗生剤との併用療法での重症細菌感染症に対する臨床的有用性について, 液状静注用アルキル化人免疫グロブリン製剤 (ポリグロビン ®, A・γG) を対照薬とする二重盲検群間比較法により比較検討し, 以下の成績を得た.
    1.総投与症例数は117例であった.そのうち, 有効性および有用性の解析対象症例は89例 (C-425群45例, A・γG群44例) であり, 安全性の解析対象症例は113例 (G425群58例, A・γG群55例) であった.
    2.臨床効果および有用性の判定にはVisualAnalogScale (VAS) 法を採用した.
    3.臨床効果のVAS値の平均値±標準偏差は, C-425群52.0±34.9 (中央値59: 0), A・γG群47.2±34.8 (中央値61.0) であり, Mann-Whitney法によるU検定および50以上を有効とした場合の両群の成績は事実上同一であった.
    4.副作用は両薬剤ともに認められなかった.
    5.有用性についての検討でも, VAS値の平均値±標準偏差はC-425群52.3±34.9 (中央値60.0), A・γG群47.9±35.0 (中央値61.0) であり, Mann-Whitney法によるU検定および50以上を有用とした場合の有用率の比較においても, 両群に有意差は認められなかった.
    以上の成績より, C-425は重症細菌感染症に対して, 抗生剤との併用において臨床的に有用な製剤であると考えられる.
  • 剛棘顎口虫及びドロレス顎口虫第3後期幼虫抽出抗原の比較
    赤尾 信明, 高倉 吉正, 大山 卓昭, 近藤 力王至
    1990 年 64 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Gnathostoma hispidumG.doloresi第3後期幼虫由来抗原の糖蛋白組成, 並びに感染ラット血清と反応する分画を検討した.剛棘顎口虫幼虫第3前期幼虫を実験的に感染させたラットでは, 感染経過に従って異なった抗原分画を認識するが, 中でも35KDa分画は感染経過が永くなるにつれて反応が増強した.またこの抗原分画はドロレス顎口虫抗原の中にも含まれ, 同じようにラット血清と反応した.レクチン染色及びEndo-H処理あるいは弱酸処理の結果から, 剛棘顎口虫幼虫の35kDa分画は高マンノース型糖鎖を, またドロレス顎口虫のこの分画は混成型糖鎖を保持していると考えられた.剛棘顎口虫幼虫から調整したES抗原の抗原性は幼虫抽出抗原と異なっており, 抽出抗原にみられた35kDa分画に抗原性は認められなかった.
  • 常岡 英弘, 水野 秀一
    1990 年 64 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    各種胃・十二指腸疾患197例について胃前庭部小弯より胃粘膜を採取し, Campylobacter pylori (以下, C. Pylon) を半定量培養し, 以下の結果を得た.
    1) C. pyloriはいずれの疾患でも検出され, 胃潰瘍87.7%, 十二指腸潰瘍100%, 急性胃粘膜病変87.5%, 胃ポリープ85.0%, 胃ビラン82.6%と特に高い検出率であった.中でも胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 急性胃粘膜病変 (急性潰瘍) においては菌量も多かった.
    2) 胃潰瘍例において, H2プロッカー投与中の症例では, 菌量が有意に少なかった (p<0.01).またH2プロッカー投与により潰瘍の縮小傾向が認められた急性胃粘膜病変例ではC. pylori 菌量減少した.
    3) 同一の胃における潰瘍辺縁部と胃前庭非潰瘍部のC. pyloriの菌量に差は認めなかった.
    4) 胃粘膜の炎症細胞, とくに好中球の浸潤の程度とC. pyloriの菌量との間には正の (r=0.679), 腸上皮化生の程度とは負の相関 (r=-0.479) が認められた.
    5) 胃・十二指腸疾患とC. pyloriの関係を検討する上で, 胃粘膜中にこの菌が見られるか否よりも, その量を重視しなけれぽならない. 胃・十二指腸疾患においてC. pyloriの菌量は病変の消長とともに変動することが示唆された.
  • 本間 仁, 牛島 廣治, 高木 道生, 北村 敬
    1990 年 64 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    胃腸炎患児104例の下痢便について, 新しい10分で診断可能なテストパック・ロタウイルス®と従来の逆受身赤血球凝集法, RNAポリアクリルアミドゲル電気泳動法 (RNA-PAGE) を用いてロタウイルス抗原の検出を比較した.
    テストパック・ロタウイルス®の成績は, RNAPAGEの成績と一致した.逆受身赤血球凝集法の結果とは一部低い抗原濃度で異なった.逆受身赤血球凝集法でテストパックと結果が異なって陽性を示した例ではラテックス凝集法, 電子顕微鏡法では陰性を示した.
    パラロタウイルス, アデノウイルス, 小球形ウイルスはテストパック・ロタウイルス®で陰性を示した.
  • 西村 昌宏, 熊本 悦明, 小六 幹夫, 恒川 琢司, 広瀬 崇興, 林 謙治, 松川 雅則, 西島 紀子, 南 邦弘, 吉尾 弘, 明石 ...
    1990 年 64 巻 2 号 p. 179-187
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    北海道における既婚妊婦3,010例を対象にChlamydiazymeTM (ダイナボット) を用いてスクリーニングを施行し, その内, 検討可能であった446例を対象にChlamydia trachomatis (以下C. trachomatis) 感染が妊娠および新生児におよぼす影響をretrospectiveに検討し以下の結果を得た.
    1) 北海道における既婚妊婦のC.trachomatis陽性率は7.2%であり, 各都市間で陽性率に差はなかった.
    2) Chlamydiazyme陽性率は10代の若年既婚妊婦で21.9%と高く, 年齢とともに有意に減少した.
    3) 前置胎盤, 切迫流産, 早産, Smallfordateinfant (SFD) の頻度は, C.trachomatis陰性群に比べて陽性群未治療例で有意に高かった.
    4) 分娩日数 (週数) はC.trachomatis陰性群に比べて陽性群未治療例で有意に短く, 出生時体重も有意に軽かった.
    5) 前期破水, 胎児仮死, 自然流産の既往, 産褥熱の頻度は, C.trachomatis陰性群と陽性群未治療例で有意差はなかった.
    以上の結果から, 既婚妊婦においてC.trachomatis感染症は北海道内に広く蔓延していることが明らかとなり, また妊娠および新生児に多大な影響を与えることが考えられ, 妊婦において早期に診断し適切な治療を行うことが必要であると考えられた.
  • 高山 直秀, 南谷 幹夫
    1990 年 64 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    当院にて昭和59年10月から水痘ワクチン市販直前の62年3月までに水痘ワクチン接種を受けた一般健康小児を観察対象とし, その中での自然水痘発症例について調査した.この期間に水痘ワクチン接種を受けた16歳未満の者は延べ463名, 接種前抗体陰性者のうち接種後に抗体上昇を認めた者は276名であり, 抗体獲得率は83.1%であった.ワクチン接種後4週間以上経過して発疹が出現し, 水痘と診断された小児が35名いた.そのうち, 1名は接種前の抗体が陽性であり, また4名は接種後抗体の上昇がみられなかった.したがって, ワクチンにより抗体上昇のあった276名における発症者は30名 (発症率は10.9%) であった.しかし再接種をして抗体を獲得した27名を加えると303例中発症者30例であり, 発症率は9.9%となった.帯状痕疹を発症した例はなかった.
    なおワクチン接種後の発症例での症状はほとんどが軽症ないしごく軽症であり, 水痘の発症を完全には抑制できないとはいえ, 水痘ワクチンは有効であると判断された.
  • 新村 眞人, 倉田 毅, 坂岡 博, 川名 林治, 川名 尚, 肥田野 信, 玉置 邦彦, 本田 まりこ, 本藤 良, 佐多 徹太郎, 村木 ...
    1990 年 64 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    蛍光標識モノクローナル抗体 (mAb) を使用した水痘・帯状疱疹ウイルス (Varicella-zostervirus, VZV) 抗原検出用診断キットの有用性を検討した.本キットは本邦で分離されたVZV14株の感染細胞すべてを明瞭に染色し, 15株の単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) および14株の同2型 (HSV-2) の感染細胞では交差反応はみられなかった.
    ヘルペスウイルス感染症の疑いのある患者の病変部より採取した検体について検討をおこない, 臨床診断で水痘と診断されたもの105例中92例 (87.6%), 帯状疱疹と診断された190例中176例 (92.6%) でVZV抗原陽性であった.一方, 単純ヘルペスと診断された96例中VZV陽性と判定されたものが5例あり, これらの5例はすべて蛍光抗体法でHSV抗原陰性であることが確認された.更に, 臨床的に帯状疱疹, 単純ヘルペスいずれとも診断のつかなかった24例中9例がVZV抗原陽性であった.またウイルス分離培養を実施した258例中VZVが分離された109例すべてについて本キットで陽性判定が得られ, HSVが分離された69例はすべてについて陰性であったことからも本キットの感度が高く, HSVとの交差反応性のないことが確認された.また水痘または帯状疱疹と臨床診断されたもので, ウイルス分離でVZV, HSVともに分離されなかった60例中53例 (88.3%) が本キットでVZV抗原陽性と判定された.以上より, 本キヅトは特異性がきわめて高く, 臨床診断を補い, かつウイルス分離培養法に比較し検出率も高く, 操作が簡便で迅速であり, 水痘および帯状疱疹の臨床検査用の診断薬として極めて有用であると結論された.
  • 塚田 勝彦
    1990 年 64 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年から1987年までの4年間に群馬大学附属病院より分離された緑膿菌385株中GM耐性を示した30株を中心に検討を加えた結果, 次の結論が得られた.
    1.GM耐性プラスミドは1984年は1種類であったが年度ごとに多彩な傾向を示した.
    2.血清型1型, ファージ型Hh8型でGM-SM-SA-PIPC, Tra-, 22.6kbないし22.5kbのプラスミドを保有する株による内科系の, また血清型別不能, ファージ型Hh8型でGM-SM-SA-CP-Hg, Tra+, IncP-2のプラスミドを保有する株による外科系の院内感染が疑われた.
    3.血清型, ファージ型とともに更にプラスミドを加え検討を加えることは緑膿菌の疫学的追求に有用と考えられた.
  • 高見沢 重隆, 海渡 健, 堀 誠治, 菊池 明夫, 橋本 隆男, 嶋田 甚五郎, 宮原 正, 城 謙輔, 牛込 新一郎, 二階堂 孝, 酒 ...
    1990 年 64 巻 2 号 p. 210-217
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    国内にて感染した男性同性愛AIDS患者を2例経験し, その発症から病理解剖まで経過を追った. 症例1は39歳, 男性, 国内にて外人を含む多数の男性との性的交渉があった. 昭和59年, 持続する発熱にて受診しアメーバ肝膿瘍が認められ (Metronidazoleにて軽快), 同時にHIV感染が証明された. その後カリニ肺炎 (Pentamidineにて軽快), サイトメガロ脈絡網膜炎を発症し, 以後AZTを使用していたが肺炎の再発, クリプトコックス髄膜炎・菌血症を併発し死亡した. 剖検にてカリニ肺炎 (治療に反応), クリプトコックス感染 (脳, 脊髄, 肺, 肝臓, 腎臓), サイトメガロウイルス感染 (肺, 肝臓, 腎臓), 非定型抗酸菌感染 (リンパ節) を認めた. 症例2は44歳, 男性. 国内にて多数の男性と性的交渉があった. 昭和61年, 近医にて肺結核を疑われ投薬加療を受けている. 62年, カンジタ性口内炎にて当科受診しHIV感染が証明された. その後, カリニ肺炎を発症しST合剤 (Co-trimoxazole) にて症状軽快するも, サイトメガロ脈絡網膜炎, 下痢 (ランブル鞭毛虫が一因) の存在を認めた. 肺炎はその後再燃し, 髄膜炎, 腸炎を併発し死亡した. 剖検にてサイトメガロ肺炎・腸炎, 起炎菌不明の髄膜炎を認めた. 今回の2症例ではアメーバ赤痢・ランブル鞭毛虫といった男性同性愛AIDS患者に比較的特異性の高い感染が認められ, また末期には多種の日和見感染症併発に対する広域な治療の必要性を痛感させられた.
  • 宗 武彦, 渡辺 尚彦, 大山 治, 信岡 祐彦, 平山 毅彦, 三宅 良彦, 村山 正博, 須階 二朗, 小林 芳夫
    1990 年 64 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近, 結核性縦隔・心膜炎の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は39歳男性, ベトナム人で, 呼吸困難を主訴に入院. 血液検査上, うっ血性肝障害および炎症所見を認め, ツベルクリン反応は強陽性であった. 胸部レントゲン写直上, 著明な心陰影の拡大と前縦隔上部の腫瘤影を, また胸部CTスキャンでも同様の縦隔腫瘤影を認めた. 心臓超音波検査では多量の心嚢水貯溜と心外膜の肥厚を認めた. 以上より, 当初縦隔腫瘍の進展による癌性心膜炎を考えたが, 心嚢水およびリンパ節より結核菌が検出され, 結核性縦隔・心膜炎と診断した. 本例のような結核性縦隔炎および心膜炎の合併例の報告は近年ほとんどなく, 希な症例であるが, 診断にあたっては常に本症を念頭に置いておく必要があると考えられた.
  • 田代 隆良, 増田 満, 佐分利 能生, 重野 秀明, 後藤 純, 那須 勝
    1990 年 64 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    水痘帯状痕疹ウイルス (VZV) 肺炎が直接死因となった全身性VZV感染症の2例を経験し, その病理組織像を中心に報告した. 症例1は48歳, 男性, 症例2は57歳, 男性で, 原疾患はそれぞれ成人T細胞白血病と急性リンパ性白血病だった. 2例とも出血性凝固壊死巣が両肺びまん性に散在し, 胸膜炎を伴っていた. VZV感染に特徴的なCowdry A型およびfull型核内封入体は気管支および肺胞上皮細胞だけでなく, 間質の線維芽細胞, 血管内皮細胞, 気管支腺細胞や胸膜細胞にも認められた. VZVは肺以外にも, 肝, 脾, 膵, 腎, 副腎, 食道, 胃, 小腸, 前立腺など多数の臓器に感染していた. また2例とも肺にはCMVが重複感染し, さらに, 症例1では胃カンジタ症, 症例2ではアスペルギルス肺膿瘍とカンジダ肝膿瘍を合併していた.
    2例とも剖検組織の免疫組織染色によりVZV抗原を証明したが, 血清のウイルス抗体価は有意の上昇を示さなかった. したがって, 細胞性免疫能低下の著しい宿主に急速に呼吸困難と血疾が出現し, 胸部X線像で両側に境界不鮮明な多発結節状陰影と胸水貯留を認めた場合には, VZV肺炎を疑い, 喀疾, 胸水さらに経気管支肺生検組織や気管支肺胞洗浄液からウイルスの分離とウイルス抗原の検出を行い, adenocine arabinoside (Ara-A), acyclovirなどの抗ウィルス剤を投与すべきと思われた.
  • 矢野 敬文, 川口 信三, 東 敏寛, 荒木 健, 小松 滋, 市川 洋一郎, 加地 正郎
    1990 年 64 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性, 発熱, 全身倦怠感で発症し, 胸部X線検査で肺炎, 胸膜炎の診断で治療を受けたが改善しないため当科に入院した. 血清および胸水中のマイコプラズマ抗体価の上昇をみとめたため, マイコプラズマ感染症としてEM+CLDMの投与をおこなったが臨床症状の改善なく, 入院後3週間目には左中肺野に空洞様陰影, 化膿性関節炎, 静脈血培養でペニシリン耐性ブドウ球菌を検出した. そこで, EM 1200mgに加えCTT 2g, FMOX 4gの併用投与を開始したところ, 入院後2ヵ月目には臨床症状, 検査所見も正常化した. 以上の経過より, マイコプラズマ肺炎・胸膜炎の経過中にS.aumus肺炎, 敗血症を併発した本邦第一例の混合感染例と診断した. マイコプラズマ感染症と細菌との混合感染例における動物実験成績, 臨床報告例の文献的考察をおこない, このような症例では重症化の傾向が見られることを強調した.
  • 吉田 登, 岩本 雅典, 迎 寛, 森 理比古, 石野 徹, 河野 茂, 山口 恵三, 牧山 和也, 原 耕平
    1990 年 64 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Vibrio uulnificusによる敗血症は非常に稀な疾患であるが, 死亡率が高く最近注目されている. 我々は本菌による敗血症で急死した一剖検例を経験したので報告する.
    症例は66歳の男性でアルコール性肝障害の既往があった. 発病の3日前に刺身を摂取. 発病の前日に酒に酔い山中の小川で転倒し, 右上肢と左下肢に擦過傷を負った. 発病当日, 早朝より40℃の高熱と痙墓が出現したため入院した. 入院時既にショック状態にあり, 全身に暗赤色の円形の紅斑が認められた. 入院時検査にて白血球減少, 肝機能異常およびDICを示唆する所見が得られた. 敗血症を疑って抗生剤を投与したが入院後約10時間で死亡した. 病理解剖の結果, 皮膚は壊死性血管炎を伴う蜂窩織炎の所見であり, 肝はマロリー小体を伴う脂肪肝の所見であった. 入院時の静脈血培養と剖検時に採取した外傷部, 胆汁, 肝, 脾, 腎および骨髄からV.vulnificusが検出された. 本例の感染経路に関しては, 経口感染か創傷感染か明確な区別は困難であったが, 外傷を受けた場所が淡水で, 死亡後当該河川より採取した水, タニシや水苔からは本菌が検出されなかったことより, 刺身を介しての経口感染の可能性が最も考えられた.
    本菌は, piperacillin (PIPC), cefoperazone (CPZ), cefmenoxime (CMX), ceftriaxone (CTRX), minocycline (MINO) およびnorfloxacin (NFLX) のいずれに対してもMICが0.1μg/ml以下と高い感受性を示した.
  • 黒木 茂高, 山田 穂積, 加藤 収, 中西 洋一, 山口 雅也, 永沢 善三
    1990 年 64 巻 2 号 p. 243-248
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肺ノカルジア症は, 比較的まれな疾患である. 我々は, 中葉無気肺に合併した肺ノカルジア症の1例を経験し, 種々治療を試みた. 症例は, 66歳の女性で, 発熱, 咳嗽, 膿性痰, 血痰を主訴に当科を受診した. 喀痰および気道洗浄液より, 多数のNocardia aseroides (NA) が同定された. Sulfamethoxazole/Trimethoprim (ST) 合剤により自覚症状は改善し, 喀痰中よりNAは消失し, 炎症症状も軽減した. しかし, 同薬剤による副作用として皮疹, 顆粒球減少, 肝障害が出現したため, 投与を中止した. その後, NAが再び喀痰中より分離されたため, Netilmicin (NTL), Minocycline (MINO) の点滴静注を行ったが十分な効果が得られずOnoxacin (OFLX) 内服とGentamicin (GM) の吸入療法にて軽快した.
    NA感染症には, サルファ剤が第一選択薬として用いられているが, NAによる気道感染症にはアミノ配糖体の吸入療法も有効な治療法の一つと考えられた.
  • 黒木 春郎, 杉本 和夫, 郡 美夫, 鳥羽 剛
    1990 年 64 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    (1) 千葉市立病院小児科において過去10年間 (1977~1986) に3例のListtera monocytogenes Ibによる髄膜炎を経験した. これはこの間の当科での細菌性髄膜炎の14%をしめている.
    (2) 3例の発症年齢は, 1歳7ヵ月, 2歳, 5歳で3例とも基礎疾患を有さない健康な幼児であった.
    (3) 2例は化学療法により治癒し, 1歳7ヵ月の1例は死亡した.
    (4) 検出されたListera monocytogenes Ibのうち2例に関して最小発育阻止濃度を測定した. Penicillin G, Ampicillinが優れた抗菌力を示していたが, Cefotaxime, Latamoxefの抗菌力は劣っていた.
    以上より, 幼児期の細菌性髄膜炎の原因菌としてListeria monocytogenesは無視できないものであり, 化膿性髄膜炎の初期治療あるいは原因菌不明の髄膜炎例には新セフェム系剤に加えてAmpicillinの併用が必要であると考える.
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