感染症学雑誌
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腸炎ビブリオVp-TRH毒素に対するモノクローナル抗体を用いたELISA法の開発と応用
Vp-TRH産生性神奈川現象陰性菌がヒト病原菌である可能性について
本田 武司本田 俊一倪 語星三輪谷 俊夫
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1990 年 64 巻 7 号 p. 767-773

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抄録

神奈川現象陽性の腸炎ビブリオの病原性についてはすでに確立されているが, 神奈川現象陰性菌の病原性はこれまで否定的に考えられてきた. しかし, 筆者らは神奈川現象陰性菌による食中毒事例を見いだし, これらの分離菌が神奈川現象の原因物質であるVp-TDHと類似する (同一ではない) 新しい毒素 (Vp-TRH) を産生することを見いだし報告してきた. 本研究では, Vp-TRHに対する単クローン抗体を作成し, これを用いて, また培地を工夫することによって, Vp-TRHを特異的に検出するELISA法を開発した. そして, このELISAを多数の腸炎ビブリオについて応用したところ, Vp-TRHがヒト下痢便由来の神奈川現象陰性菌に集中してみられ, 環境や食品由来の神奈川現象陰性菌にはほとんど認められないことが明らかになった. このように, Vp-TRH産生性腸炎ビブリオがヒト由来菌に集中してみられたことから, Vp-TRH産生菌はVp-TDH産生菌 (神奈川現象陽性菌) と同じく病原菌である可能性が示唆される. この可能性は, さらにウサギ結紮腸管ループ試験の結果からも示唆された. このような結果から, 神奈川現象陰性菌のうちVp-TRH産生性神奈川現象陰性菌はヒト病原菌となりうる可能性が考えられた.

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