感染症学雑誌
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無菌性髄膜炎における病原ウイルスの多様性について
1984年の多治見市における流行例より
三輪 智恵子渡辺 豊
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1990 年 64 巻 7 号 p. 794-801

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抄録

1984年5月から9月にかけ, 岐阜県多治見市を中心とする東濃地域で, 無菌性髄膜炎 (AM) の流行が認められた. そのうちの71症例について, ウイルス学的. 血清学的検索を実施した. その結果は以下の様な成績であった.
1. ウイルス分離検査を実施した59症例の38症例 (64.4%) より, コクサッキーウイルス (Cox.) B-1, Cox. B-4, Cox.B.5とエコーウイルス (Echo.) 16の4種のエンテロウイルスが分離された. 病原ウイルスと確定されたウイルス型は, Cox. B-1とCox. B-5であった. しかし, Cox. B-4とEcho-16もAM流行と関連性があったことが推定された.
2. 47症例の急性期と回復期のペア血清につき, 4種の分離株に対する中和抗体価を測定した. その結果, 各型分離株に対する有意抗体上昇率は, Cox. B-1では29.8%, Cox. B-4では12.8%, Cox. B-5では17.0%, Echo-16では34.0%であった.
3. ウイルス分離陽性で血清学的検査も実施した24症例の10例 (41.7%) が, 分離ウイルス型と, 有意抗体上昇を示したウイルス型と一致していた. いずれのウイルス型に対しても有意抗体上昇を示さなかった症例は6例 (25.0%) であった. 残り8例 (33.3%) は, 分離ウイルス型と, 有意抗体上昇を示したウイルス型と一致しなかった.
4. 患者血清検査で, 有意抗体上昇が認められた35症例中, 1つのウイルス型に有意抗体上昇が証明されたのは28例 (80.0%) で, 2つ以上のウイルス型に有意抗体上昇を示したのは7症例 (20.0%) であった.

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