感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
Chlamydia trachomatisによる尿路性器感染症における局所分泌液中のIgA抗体の臨床的意義
血清抗体との比較およびimmunoblotting法による抗原特異性の解析
林 謙治熊本 悦明
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 65 巻 11 号 p. 1430-1445

詳細
抄録

男女各種尿路性器感染症例における局所分泌液中のIgA抗体価をimmunoperoxidase assay (Savyon社製キット) にて測定し, 局所分泌液中のIgA抗体の臨床的意義について検討した.
さらに分泌液中のIgAのC.trachomatisに対する抗原特異性をimmunoblotting法を用いて確認した.
(1) 感染局所からの抗原検出が比較的容易であると考えられる女子子宮頸管炎および男子尿道炎症例において分泌液中の抗C.trachomatis IgAはC.trachomatis抗原検出例で非検出例と比し, その陽性率が高かった.しかもその分泌液中のIgAは血清中に比し, 抗体価がやや高い傾向を示し, 感染局所免疫を強く反映していることが示唆された.
(2) 感染局所からの抗原検出の困難な慢性前立腺炎において前立腺分泌液中のIgAは23.6%の陽性率であり, しかもそのIgAの大半が分泌型IgAであることから, C.trachomatis感染による前立腺部での局所免疫を反映していることが強く示唆された.
(3) さらに分泌液中のIgAはimmunoblotting法にてC.trachomatisの主要外膜蛋白 (MOMP) および60Kdの外膜ポリペプチドとの反応を認め, C.trachomatisに対する特異的な分泌型IgAであることが証明された.
以上, immunoperoxidase assayやimmunoblotting法を用いた局所分泌液中のIgA抗体検査は感染局所からの抗原検出が困難な症例 (慢性前立腺炎など) のC.trachomatis感染の診断法として有用であることが確認された.
また分泌液中のIgA抗体検査はC.trachomatis感染が疑われる症例で抗原が陰性の場合でもその見落としを少なくする可能性があると考えられた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top