急性上気道炎 (かぜ症候群) において,
C. pneumoniae, TWAR株がどの程度関与しているかを調べる目的で, 血清学的および分離培養法にて検査した. 1990年3月から1991年1月までに受診した急性上気道炎患者46名 (男性17名, 女性29名, 7-71歳, 平均年齢36.7歳), 47症例を対象した. また対象疾患とした急性上気道炎とは, 咽頭痛, 軽度発熱, 鼻症状を主症状とし, 喀痰, 鼻汁は膿性でないもの, 重症の気管支炎や肺炎症状のないものとした. 40例に血清抗体価を行い, 26例に分離培養を行った. 血清抗体価測定および分離培養の両者を施行したのは19例であった. また同時期に受診した健常者20名 (22歳-67歳, 平均年齢47.2歳) をコントロール群とし, 血清抗体価測定のみを行った.
C. pneumoniae抗体保有率はコントロール群で30%, 患者群で52.5%であった. 両群間に有意差はみられなかった. 急性期抗体保有率についてみるとコントロール群ではみられなかったのに対し, 患者群では分離培養にて3例 (11.5%) に陽性であり, 血清抗体価では7例 (17.5%) に陽性であったので,
C. pneumoniae感染と考えられた症例は合計10例 (21.3%) であった.
C. pneumoniae感染は呼吸器感染, 特に下気道感染の原因として重要であると考えられているが, 下気道症状を伴わない急性上気道感染に限っても, 予想以上に
C. pneumoniaeが関与していることが示唆された.
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