感染症学雑誌
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1986年の北九州市におけるエコーウイルス7型の流行について
下水からのウイルス分離と血清調査からの考察
梨田 実下原 悦子杉嶋 伸禄
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1991 年 65 巻 6 号 p. 725-729

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抄録

1986年に福岡県内で実施された感染症サーベイランス事業の病原微生物検査では, 無菌性髄膜炎患者からはエコーウイルス7型は分離されず, 北九州市内も含め, 福岡県内でのこのウイルスの流行は, はっきりしなかった.
著者らは当時, 北九州市内における腸管系ウイルスの流行状況を知る目的で下水 (活性汚泥) からのウイルス分離を試みていたが, 1986年7月から急にエコーウイルス7型が多く分離されはじめ, 12月まで毎月分離された. このことから, この時期にエコーウイルス7型の流行があったことが考えられた.
そこで, 1989年に採取した市内の小児の血清を使い, エコーウイルス7型に対する中和抗体保有調査を行ったところ, 1986年当時, 1歳以上の小児の約半数が抗体を保有していた.
下水からのウイルス分離と小児の血清疫学調査により, 感染症サーベイランス事業では確認されなかった1986年のエコーウイルス7型の北九州市内での流行が明らかとなった.

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