1992 年 66 巻 4 号 p. 540-545
40歳, 男性の急性骨髄性白血病患者の治療経過中に粟粒性微小膿瘍の形成を特徴とする播種性アスペルギルス症が発症した.生前診断は困難であった.剖検では, アスペルギルスによる微小膿瘍が両肺に瀰漫性に多数分布し, 腎と甲状腺にも少数散見された.胃の潰瘍形成や胸膜病変から横隔膜への直接波及もみられた.しかし, 肉眼的に明らかな壊死性肺炎や血管侵襲による出血性肺梗塞はみられなかった.感染源として, 中心静脈カテーテル感染がもっとも疑わしいと考えられた.宿主側要因には, 高度かつ持続的な好中球減少をもたらした治療抵抗性の白血病と強力な化学療法, ステロイドの長期投与, 持続的な低蛋白血症, 広域抗生薬の長期投与があげられた.中心静脈カテーテルの汎用化にともなって, これを侵入門戸とする粟粒性アスペルギルス症の増加が危惧される.