感染症学雑誌
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喀痰よりPasteurella multocidaの分離された症例の研究
荒島 康友岩崎 洋熊坂 一成河野 均也
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1993 年 67 巻 11 号 p. 1041-1044

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抄録

喀疾からのPasteunlla multooidaの分離状況および患者の年齢分布, 基礎疾患等について, 258病院を対象に調査を行った.
喀疾からのPastemlla multocidaの分離は, 67病院から179例が確認され, 1989年, 1990年, 1991年 (1~7月) にかけて, 18例, 25例, 18例 [年間推定31例] であり, 1990年, 1991年と前年度比39.8%, 24%の増加を示し, 我々の予想以上の増加がみられた.年齢の分布は男性44例で1~85歳 (平均58.9歳), 女性45例で18~85歳 (平均60.2歳) であり, 41歳以上が77例 (86.5%) と中高年者に多く認められた.基礎疾患の確認できたものは72例であり, 呼吸器に関連した疾患は61例 (84.7%) と高率であった.血疾を認める症例は, 悪性腫瘍との鑑別を行う点で重要な感染症の1つと思われた.Pasteunlla multocidaによる繰り返し感染は, 男性4例, 女性4例に認められ, そのうち4例に動物の飼育が確認された.患者の動物との接触は26例の記載が認められたのみで, その他は不明であった.このことは動物が感染源であることを示唆するものと思われた.
喀疾からのPasteunlla multocidaの分離は近年増加傾向にあり, 呼吸器に基礎疾患のある患者, 中高年者および動物の飼育者においては, zoonosisとしての衛生教育および注意が必要と思われた.

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