感染症学雑誌
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老年者の好中球機能の検討
臥床および感染症患者を中心に
足立 暁鈴木 幹三山本 俊幸
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1993 年 67 巻 11 号 p. 1083-1093

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抄録

老年者の生体防御能の実態を知るために, 健康, 臥床および細菌感染症患者を対象とし, 好中球機能としてchemotaxisとchemiluminescence (CL) を測定し, 併せて体液性防御因子についても検討した.
1) 健康老年者のchemotaxisとCLは, 健康成人と比較してその差は軽度であり, 加齢による好中球機能の低下は明らかではなかった.
2) 臥床患者における血漿フィプロネクチン (PFN) は健康老年者に比し低値傾向を示した.
3) 細菌感染症の急性期ではchemotaxisとCLは, 臥床, 非臥床にかかわらず健康老年者に比し高値であった.このうち臥床患者のCLは非臥床患者に比し, やや低値を示した.またCLと体温との間には正の相関関係がみられた.一方, 急性期では体液性防御因子のひとつであるPFNが低下していた.
4) 感染症の治癒に伴い, chemotaxisとCLは低下, PFNは上昇し回復した.補体系では, CH50が軽度上昇した.
以上の結果より, 老年者の好中球機能は臥床, 非臥床にかかわらず感染症の発症によって充進するが, 臥床患者では非臥床患者に比し好中球の反応が, やや低い傾向にあると考えられた.

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