感染症学雑誌
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大腸菌腹腔内投与マウスを用いた敗血症時肝機能障害の形態学的研究
小玉 仁森下 靖雄安斉 徹男
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1993 年 67 巻 4 号 p. 342-348

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抄録

敗血症時の肝機能障害では, ビリルビン代謝の障害が主で, 逸脱酵素の増加, 蛋白及び脂質合成能の低下も見られる。今回臨床例に近い敗血症モデルとして, E. coliをマウスに腹腔内投与し, 超微形態の経時的観察を行い, 肝機能障害の臨床所見と形態学的所見との関連を検討した。肝の形態学的観察では, 1) Kupffer細胞は, まず細菌を貪食し, 次に赤血球及び白血球を貪食し, 比較的大型のlysosomeが出現した。2) 肝細胞は, 細胞質の電子密度が低下し, lysosomeやperoxisomeが増加した. ミトコンドリアの膨化, 粗面小胞体の断裂と配列の不規則化, 滑面小胞体の小空胞化, Golgi装置の層板と空胞の拡大がみられた。さらにビリルビン様物質の蓄積と考えられる高電子密度のcytolysomeが肝細胞の諸々に多数出現した。3) 毛細胆管は狭小化した。4) 類洞内には, 赤血球の集塊や白血球がみられた。
以上より, 総ビリルビン (T. Bili) 値の上昇は, Kupffer細胞による赤血球貧食能の亢進と肝細胞の細胞内小器官の変性による機能障害, 毛細胆管の狭小化のための胆汁うっ滞によると考えられた。逸脱酵素の増加は, ミトコンドリアにおける基質の電子密度の低下と膨化傾向から説明できる。蛋白合成能や脂質合成能の低下は, 肝細胞の細胞内小器官の変性によると考えられた。

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