感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
嫌気性菌呼吸器感染症の臨床的検討
大西 徳信澤木 政好三笠 桂一古西 満浜田 薫竹内 章治前田 光一国松 幹和成田 亘啓増谷 喬之佐野 麗子
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 67 巻 4 号 p. 336-341

詳細
抄録

最近8年間に当科において経気管吸引法, 経皮的肺吸引法あるいは胸腔穿刺にて, 嫌気性菌が確認された35例について臨床的に検討をした。疾患は膿胸9例, 肺炎9例, 肺膿瘍5例, 壊死性肺炎1例, 慢性下気道感染症11例であった。検出菌は嫌気性菌単独検出13例 (37%), 嫌気性菌と好気性菌との複数菌検出22例 (63%) でBacteroides属, Peptostreptococcusが多く検出された。発症の宿主側要因を検討したところ胸膜, 肺実質感染症24例中誤嚥が原因と考えられた症例は11例 (46%) と半数以下で, 13例 (54%) では明らかな誤嚥が認められず, 誤嚥以外の発症誘因も重要であると考えられた。その発症誘因として下気道粘液線毛輸送機構障害の原因と考えられる慢性下気道感染症と喫煙歴とにつき検討し, 慢性下気道感染症またはBrinkman Index600以上の重喫煙歴の一方か双方かが13例全例に認められた。今回の検討から明らかな誤嚥を認めない症例の嫌気性菌呼吸器感染症には慢性下気道感染症, 重喫煙などの気道局所防御機構の低下の関与の可能性が示唆された。

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top