感染症学雑誌
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播種性トリコスポロン感染症の菌学的, 免疫組織化学的研究: 自験9例と本邦報告例の検討
田代 隆良永井 寛之山崎 透後藤 陽一郎秋月 真一郎那須 勝
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1993 年 67 巻 8 号 p. 704-711

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抄録

最近, Trichcsporcn beigelii (cutaneum) による日和見感染が増加している. 大分医科大学第2内科において死後, 肺穿刺液および心腔内血液培養を施行した313例中7例 (2.24%) からT. beigelii が分離され, 組織学的, 臨床的にうち5例がトリコスポロン感染症と診断された. 分離された T. beigeliiをウサギに免疫して得られた抗体を用いて, 過去の深在性真菌症の免疫組織染色を行ったところ7例が陽性であった. うち6例はこれまでカンジダ症あるいはカンジダとアスペルギルスの重複感染症と診断されており, 本症の組織学的診断の困難性と抗トリコスポロン抗体を用いた免疫組織染色の有用性が示された.
菌学的, 免疫組織化学的に診断された自験9例を含む本邦報告43例の集計では, 基礎疾患として急性骨髄性白血病などの血液疾患が37例 (86%) を占め, 強力な抗癌化学療法により好中球減少を認める症例に好発していた. アムホテリシンBに抵抗性の症例が多く, 致命率は88%と極めて高かった. Immunocompromised hostの増加とともに播種性トリコスポロン感染症は今後増加することが予想され, 発症予防と早期診断および治療法の確立が望まれる.

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© 日本感染症学会
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