感染症学雑誌
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エドバコマブ (E5) のグラム陰性菌敗血症に対する臨床第I相試験
小林 宏行河合 伸酒寄 享遠藤 重厚星 秀逸稲田 捷也吉田 昌男
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1994 年 68 巻 1 号 p. 59-80

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抄録

抗エンドトキシンモノクローナルIgM抗体E5 (エドバコマブ) の臨床第1相試験をグラム陰性菌敗血症患者 (含む疑い) 10例を対象に, 1mg/kg, 2mg/kgもしくは4mg/kgをいずれも1時間の単回点滴静注で実施し, E5の有効性, 安全性及び体内動態を検討し, 併せて適切な用量の検索を行った.
1.E51mg/kg, 2mg/kg及び4mg/kgを単回点滴静注投与した時の最高血中濃度は, それぞれ9.92, 11.52及び35.64μg/mlであり, 血中濃度曲線下面積 (AUC) についてもそれぞれ129.83, 200.80及び574.39μg・hr/mlといずれもほぼ投与量に応じて増大した. また, 血中濃度半減期はそれぞれ8.72, 11.74及び10.82時間とほぼ同様であった.
2. 尿中にE5は全例で検出されず, 未変化体の腎排泄は認められなかった.
3. 血中エンドトキシン濃度は, 投与前9.8pg/ml以上の陽性を示した8例のうち投与1時間以内に9.8pg/ml以下に減少した症例は, 1mg/kg投与群で2例中0例 (0%), 2mg/kg投与群で3例中3例 (100%), 4mg/kg投与群で3例中1例 (33.3%) であった.
4. E5を単回点滴静注投与した際の臨床効果は, 1mg/kg投与で3例中3例 (100%), 2mg/kg投与で4例中4例 (100%), 4mg/kg投与で3例中2例 (66.7%) が有効以上であった.
5. E5投与後の主要検査項目の改善度を投与量別に平均値でみると, 2mg/kg投与群では投与12時間後より36℃ 台に解熱をみており, 脈拍数, 白血球数, 血小板数, CRPの改善の度合も2mg/kg投与群でより明らかであった.
6. 概括安全度は10例とも “安全性に問題なし” であり, 本剤投与によると思われる副作用及び臨床検査値異常はみられなかった.
7. E5に対する抗体 (HAMA) 陽性は10例中2例 (IgG抗体のみ上昇) で認められたが, 1例 (4mg/kg投与) は9週後で陰性化し, 他の1例 (1mg/kg投与) も次第に減少する傾向がみられた. 8. 有用以上の有用度は, 1mg/kg投与群で3例中3例 (100%), 2mg/kg投与群で4例中4例 (100%), 4mg/kg投与群で3例中2例 (66.7%) であった.
9. 血中エンドトキシンの減少及び体温・白血球数・血小板数・CRPの改善度等を考慮し, E5の1回投与における至適用量は2mg/kgと考えられた.
以上の成績より, E5はグラム陰性菌敗血症に由来するエンドトキシン血症に対し有用性が示唆された.

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