感染症学雑誌
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全国各地で分離された肺炎球菌の疫学的研究
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1994 年 68 巻 11 号 p. 1338-1351

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抄録

我が国において, 臨床検査材料材料から分離される肺炎球菌の中に占めるペニシリン耐性菌の割合を検討するために, 1993年から1994年にかけて, 全国各地の36施設から1,127株の肺炎球菌が収集された.
これらの菌株の多くは喀疾 (38.2%), 咽頭 (31.4%), 鼻汁 (16.4%), および耳漏 (5.7%) から分離されたが, その他にわずかではあるが, 血液 (19株;1.8%), 髄液 (11株;1.0%) および胸水 (2株; 0.2%) 由来が含まれていた. 肺炎球菌が分離された患者は, 12歳以下の小児と60歳以上の成人が大半を占めていた.
これらの菌株は, penicillin G, ampicillin, oxacillin, ceftizoxime, cefixime, cefdinir, imipenem, panipenem, erythromycin, clindamycin, minocycline, vancomycin に対する感受性を測定した. 感受性の測定は, Mueller Hinton 寒天培地に10%の割合に綿羊脱線維血液を加え, 寒天平板希釈法によつて行った. penicillinGに対して0.125μg/ml以上のMICを示す菌株をペニシリン耐性とみなしたが, 1,127株のうち471株 (41.8%) がペニシリン耐性であった. ペニシリン耐性の肺炎球菌は, ampicillin, oxacillin, ceftizoxime, cefixime, cefdinir を含むβ-ラクタム系薬にも耐性であった. カルバペネム系薬のpanlpenemやimipenemのMICは, 2峰性の分布を示すものの0.004から2.0μg/mlの範囲であったが, これらの薬剤はペニシリン耐性肺炎球菌の発育をほぼ0.5μg/ml以下で阻止した. 耐性菌の認められなかったのは, vancomycinのみであった. ペニシリン耐性肺炎球菌の大多数は, マクロライド系薬剤やminocyclineにも同時に耐性であった.
また, ペニシリン耐性肺炎球菌の分離率は東日本地域で低く, 西日本地域で高い傾向が認められた.

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