感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
キノロン系抗菌薬の予防投与中の血液疾患患者の便培養にみられたEnterococcus faeciumについて
福田 哲也秋山 秀樹正司 房谷川 宗坂巻 壽小野澤 康輔小林 寅哲
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 68 巻 4 号 p. 486-490

詳細
抄録

キノロン系抗菌薬の予防投与を受けている血液疾患患者の, 便のサーベイランスカルチャーを施行し, 腸内細菌叢における多剤耐性菌の出現につき検討を行った.対象は1991年3月より1992年9月までに都立駒込病院血液内科に入院し, 化学療法施行後の顆粒球減少期にキノロン系の抗菌薬の予防投薬を受け, かつ便のサーベイランスカルチャーが1回以上行われた55症例である.予防投与は化学療法施行時に開始され, サーベイランスは, 週に1回, 自然排便にて得られた便を, piperacillin (300μg/ml) とamikacin (20μg/ml) を混入した培地にて培養して施行し, 多剤耐性菌の発現を検討すると共に, そこで得られた菌株につき各種抗菌薬に対する感受性をさらに検討した.
その結果, 計55例中34例の便培養において, Enterococcusが検出された.23人の患者より検出されたEnterococcusにつき, さらに検討を行った所, 1株はE.feecalisで, 22株はE.faeciumであった.E.faeciumはquinolone, aminoglycoside, cephalosporin, penicillin等に対し広く耐性を有し, 高濃度gentamicinに対する耐性も18/22株で認められたが, vancomycinには全て感受性であった.多剤耐性のEnterococcusによる院内感染を予防するために適切な処置をとることが今後必要と思われる.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top