1994 年 68 巻 4 号 p. 486-490
キノロン系抗菌薬の予防投与を受けている血液疾患患者の, 便のサーベイランスカルチャーを施行し, 腸内細菌叢における多剤耐性菌の出現につき検討を行った.対象は1991年3月より1992年9月までに都立駒込病院血液内科に入院し, 化学療法施行後の顆粒球減少期にキノロン系の抗菌薬の予防投薬を受け, かつ便のサーベイランスカルチャーが1回以上行われた55症例である.予防投与は化学療法施行時に開始され, サーベイランスは, 週に1回, 自然排便にて得られた便を, piperacillin (300μg/ml) とamikacin (20μg/ml) を混入した培地にて培養して施行し, 多剤耐性菌の発現を検討すると共に, そこで得られた菌株につき各種抗菌薬に対する感受性をさらに検討した.
その結果, 計55例中34例の便培養において, Enterococcusが検出された.23人の患者より検出されたEnterococcusにつき, さらに検討を行った所, 1株はE.feecalisで, 22株はE.faeciumであった.E.faeciumはquinolone, aminoglycoside, cephalosporin, penicillin等に対し広く耐性を有し, 高濃度gentamicinに対する耐性も18/22株で認められたが, vancomycinには全て感受性であった.多剤耐性のEnterococcusによる院内感染を予防するために適切な処置をとることが今後必要と思われる.