感染症学雑誌
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グリチルリチンの静注治療が著効を示したC型慢性肝炎を有する口腔扁平苔癬の1例
長尾 由実子佐田 通夫谷川 久一亀山 忠光
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1995 年 69 巻 8 号 p. 940-944

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抄録

口腔扁平苔癬 (orallichenplanus: OLP) は, 慢性の角化異常を伴う難治性の炎症性疾患であるが, その経過は長く完全治癒が困難な疾患の一つである. OLPの発症原因については種々のものがあるとされているが, 今だ明らかにされておらず, 根治的治療法は, 確立されていない. そこで今回, 従来慢性肝炎に対する有効な治療法の一つとして広く使われているグリチルリチン (SNMC®) を, OLP患者に投与してその経過を観察した.
症例は49歳の女性で, 主訴は口腔内粘膜全体のi接触痛であった. 既往歴にC型慢性肝炎があり現在経過観察中である. 現病歴は, 1994年11月頃より両側下顎歯肉部から頬粘膜にかけて白斑を認め近医での加療を続けていたが, 改善ないため久留米大学医学部口腔外科を受診した. 扁平苔癬 (両側頬粘膜, 全顎に及ぶ歯肉並びに歯肉頬移行部, 口底, 口蓋粘膜部) の診断で, セファランチン®末の内服投与及び外用ステロイド剤を使用した. 同治療を7カ月続けたが, 口腔粘膜病変の若干の改善と再発を繰り返すだけで, 同年10月には両側頬粘膜のびらん面の拡大を認め, 強い接触痛のために摂食障害が出現した. そこで, 軽度の血清AST値, ALT値の異常があることを考慮し, SNMCの連日投与 (40ml/dayiv) を行った. 治療後2カ月で両側頬粘膜のびらん面はほぼ消失しまた広範囲に認められていた白斑病変は消失傾向を示し, 疹痛も軽減した.

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