感染症学雑誌
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マクロライド抗菌薬のヒト末梢血における炎症性サイトカインmRNA発現に対する影響
有川 圭介本田 順一杉原 栄一郎桑元 珠郁子熊谷 睦子秋吉 裕也松本 久美白石 恒明力丸 徹大泉 耕太郎
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1996 年 70 巻 7 号 p. 696-701

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抄録

近年, びまん性汎細気管支炎 (以下DPB) などの慢性下気道感染症に対するマクロライド系抗菌薬 (以下Mls) の有効性が明らかにされているが, その有効といわれている14員環Mls, 15員環Mls作用機序については未だ明らかにされていない. 我々は今回, 健常人の全血に14員環Mls (EM), 15員環Mls (AZM), 16員環Mls (RKM) をそれぞれ最終濃度0, 0.008, 0.04, 0.2, 1.0, 2.5μg/mlで投与後lipopolysaccharide (以下LPS) 刺激を加えて炎症局所のcompartmentalized spaceのexperimentalvivoモデルとして, 炎症性サイトカインIL1β, IL-8, TNF-αのmRNAの発現に対する影響をReversetranscriptional polymerase chain reaction (以下RT-PCR) 法にて調べた. 臨床的に無効と言われている16員環Mlsは有意な変化無く, 有効といわれている14員環Mls, 15員環Mlsは臨床的に到達可能な低い治療濃度レベル (0.04~0.2μg/ml) で有意なmRNAの強い抑制を示した. また, 治療濃度レベル (0.04~0.2μg/ml) より高い濃度で徐々にサイトカインmRNA発現抑制が弱まる結果を得た. 以上の結果より14, 15員環Mlsは炎症性サイトカインを遺伝子レベルで抑制することでDPBに有効に作用している可能性が示唆された.

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© 日本感染症学会
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