感染症学雑誌
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GentamicinによるPsendomonas aeruginosa臨床分離株の薬剤感受性およびlipopolysaccharide構成の変化について
長谷川 美幸小林 寅哲雑賀 威西田 実
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1997 年 71 巻 3 号 p. 199-206

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抄録

臨床分離Pseudomonas aeruginosaがgentamicinとの接触によって多剤耐性化する現象を, lipopolysaccharideの構成と関連して検討した. 長鎖および短鎖LPS株, LPS欠損株各3株に, gentamicinを種々の濃度に含む培地中で, 35℃で一夜, 1回または反復接触させた後, 生存し増殖した菌について, 各種抗緑膿菌薬耐性化の傾向およびLPSの変化の有無を観察した.
Gentamicinの1回接触では, 長鎖株No.4および短鎖株No.41のみでLPSの欠損変異がみられた. 前者では同時に, ceftazidimeとgentamicinに対する耐性化が認められた.
Gentamicinの反復接触では, LPSの変異はNo.4およびNo.14株のみに生じたが, 試験株のすべてがgentamicinに耐性化した. Gentamicinとの接触により生じたLPS欠損変異株は, 親株と比較してin vitroにおける [3H]-gentamicinの結合量は著しく低かった. Gentamicinとの接触によって誘発されたP.aeruginosaのgentamicin耐性の一部は, LPS欠損による結合能の低下に起因する. しかしgentamicin処理後, LPS欠損のない試験菌株におけるgentamicin耐性化は, 菌表層部の陰性荷電の低下を示唆する.
Gentamicinの接触によるP.aeruglnosaのLPS欠損は安定で, in vitroにおける15代の継代によっても構造の変化はみられなかった.P.aeruginosaのgentamicinを含む多剤耐性は, 薬剤の存在しない環境においても維持される可能性がある.

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