感染症学雑誌
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の検出: 気道と消化管との関連性
伊藤 陽一郎田中 学島崎 信中村 俊之木村 泰島 寛人加藤 直樹渡辺 邦友
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1997 年 71 巻 3 号 p. 207-213

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抄録

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の糞便を介した院内感染の可能性があり得るか否かを検討するため, 我々は喀痰または咽頭培養にてMRSAが検出された気道MRSA陽性患者に関して糞便中のMRSAの有無を調べた.
1993年4月から10月までに気道MRSA陽性入院患者12例と気道MRSA陰性入院患者11例の糞便培養を行った. さらに気道MRSA陽性入院患者に関しては, その後も検討症例を追加し, 合計50例について検討を行った. 初期検討において, 気道MRSA陽性患者の12例中7例 (58.3%) でMRSAが糞便から検出されたが, 気道MRSA陰性患者では全く検出されず, 両者間で有意差を認めた (p<0.01). 一方, 追加症例も含めた気道MRSA陽性患者50例全体では27例 (54.0%) で糞便からMRSAが検出された. これら50例において, H2プロッカーは糞便MRSA陽性27例中23例 (85.2%) に投与されていたが, 糞便MRSA陰性23例では11例 (47.8%) にしか投与されておらず, 両者間で有意差を認めた (p<0.01). 以上より気道MRSA陽性症例では糞便中にMRSAが少なからず存在し, 糞便を介した院内感染をおこしうることが示唆された. またH2プロッカーを投与された症例では糞便からMRSAが極めて高率に検出されることから, 気道MRSA陽性症例への安易なH2プロッカーの投与は慎むべきであると考えられた.

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