感染症学雑誌
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ラテツクス凝集反応法によるVero毒素産生性大腸菌の同定: 大腸菌ベロトキシン検出用試薬の評価
甲斐 明美尾畑 浩魅畠山 薫五十嵐 英夫伊藤 武工藤 泰雄
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1997 年 71 巻 3 号 p. 248-254

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抄録

腸管出血性大腸菌 (enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC) またはVero毒素産生性大腸菌 (verotoxin-producing Escherichia coli, VTEC) の同定には, 本菌の産生するVero毒素の産生性を調べることが不可欠である.本毒素の簡易・迅速検出法として, ラテックス凝集反応 (LA) 法を応用した「大腸菌ベロトキシン検出用試薬」(デンカ生研) が開発されたので, その有用性について検討し
ヒト由来株178株 (VT陽性株147株および陰性株31株), および動物由来株158株 (VT陽性株79株および陰性株79株) について, Vero培養細胞法およびPCR法の成績とLA法の成績を比較検討した結果, ヒト由来株では, LA法の感度は100%, 特異性100%, 一致率100%, 動物由来株では, LA法の感度は94.9%, 特異性100%, 一致率97.5%であった.しかし, 浮腫病のブタから検出される大腸菌が産生するVT2のvariant toxinであるVT2e産生性の8株では, 4株は陽性, 残りの4株は陰性であった.このVT2e産生性大腸菌とヒトの感染症との関係は認められていないため, ヒトの臨床材料を検査するに当たっては問題にはならないであろう
本試薬によるVTの検出は, 操作が簡単であり, また特異性も高いことからVTECの検査を行うための簡易迅速診断法として極めて有効であることが示唆された.

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