1997 年 71 巻 3 号 p. 269-272
Aspergillusによる心内膜炎を合併した慢性骨髄性白血病の一例を提示する.症例は46歳.急性転化後の化学療法に伴う顆粒球減少時に肺炎を合併, 次いで多発性の動脈血栓症を合併し, 心内膜炎と診断された.各種培養は陰性であり, 血清学的検査も陰性であったため, 細菌性心内膜炎の診断は困難であった.腹部大動脈の血栓症に対し血栓溶解療法を施行したが, 頭蓋内出血により死亡した.解剖により真菌性心内膜炎が証明され, polymerase chain reaction (PCR) 法とSouthern法により原因菌としてAspergillusが同定された.Aspergillus感染症の診断において, PCR法は有力な手段となると考えられた.