感染症学雑誌
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劇症型A群レンサ球菌感染症患者由来株における菌体外産生物質の性状
鈴木 潤吉原 英児小林 貞男
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1997 年 71 巻 3 号 p. 273-278

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抄録

劇症型A群レンサ球菌感染症患者分離株と, 咽頭炎および猩紅熱患者対照株が産生するストレプトリジンO (SLO), proteinase, 発赤毒素およびDNaseについて, 産生量とそれらの性状について検討した.劇症株で対照株より平均産生量が上回ったのはSLOおよびDNaseであり, 病原性を有するSLOでは劇症群10例中2例, 対照群15例中1例が高値を示した.これまで, 起因菌の産生する外毒素によりショック状態が誘発されることが報告されているので, 劇症株では発赤毒素の高活性を期待したが, 対照株と差が見られなかった.SLOはpI分析によるとacidic type SLOであり, 分子量もこれまでの報告と同様に64,000を示した.また, proteinaseのpIおよび分子量についてもザイモグラムを用いて対照株と比較したが, 両者で差が認められなかった.いくつかの産生物質の示す活性の総和が病因になると考えられるが, 検討した4種の菌体外産生物質ではstreptococcal toxic shock syndromeに共通する傾向が認められないことより, これら複数の因子による病原性発現の多様性が強く示唆された.

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