感染症学雑誌
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各種透析膜及び透析関連因子が血清 (1→3)-β-D-グルカン値に及ぼす影響についての検討
吉田 耕一郎中島 正光山崎 正臣北野 裕一二木 芳人大澤 源吾松島 敏春
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1998 年 72 巻 3 号 p. 245-248

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抄録

血中 (1→3)-β-D-グルカン (β-グルカン) 値の測定は, 深在性真菌症の診断において臨床で広く用いられており, その有用性は既に高い評価を得ているものの, 様々な因子で影響を受けることも知られており, 血液透析もその原因の一つである.今回, 我々は川崎医科大学腎センターで血液透析を受けた患者26人を対象として透析膜がβ-グルカン値に及ぼす影響を臨床的に検討した.検討した透析膜は合成高分子膜4種類, 天然膜3種類であった.また, その他の透析関連因子の影響を見るために透析回路洗浄液5セット分, 透析液5本, ウェットタイプ透析膜の充填液2種, ヘパリン2バイアルについてもβ-グルカンを測定した.脱酢酸セルロース膜の透析症例では, 透析後β-グルカン値が高値となっている症例が認められたが, トリアセテート膜症例では全て比較的低値であった.合成高分子膜による透析症例では, 透析後, 明らかなβ-グルカンの増加を認めた症例はなかった.さらにヘパリンや一部の透析膜充墳液はβ-グルカンによる汚染が認められた.透析患者においては, 透析膜以外にもβ-グルカン値に影響を及ぼす因子があると考えられた.

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