感染症学雑誌
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好中球の抗Candida活性に対するL-システインの効果
丹生 徹
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1998 年 72 巻 7 号 p. 727-737

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抄録

既に著者らは, 輸液に用いられるアミノ酸混液は, ヒト好中球のC. albicans発育阻止能に対する高濃度グルコースやデキサメタゾンの抑制作用を軽減する効果のある事を明らかにしたが, この効果を持つアミノ酸を特定して, その作用機序を明らかにする事を目的に検討を行った. ヒト好中球の抗Candida活性は, 2%グルコース存在下の培養では抑制され, そこへ中心静脈栄養用市販アミノ酸混液を添加すると, この抑制作用は軽減された. アミノ酸混液中に含まれる18種類のアミノ酸について群別および個別に, ヒト好中球の抗Candida活性に対する高濃度グルコースの抑制作用を軽減する効果を検討した結果, L-システインが最も有効であり, 単独で添加しても同じ効果が見られる事が示された. 従って, アミノ酸混液の効果の本体は, L-システインである事が示唆された. 高濃度グルコースやデキサメタゾンのヒト好中球機能抑制作用は, 好中球の抗Candida活性の主要エフェクター分子の一つであるラクトフェリンの産生能を抑制するが, L-システイン存在下ではその抑制が軽減される事が認められた以上の成績から輸液製剤に含まれているL-システインは, 高濃度グルコースによる好中球の抗Candida活性の抑制を軽減する役割を果たしている事が明らかとなるとともに, カテーテル感染を起こしにくい高カロリー軽液製剤の開発などへのL-システイン応用の可能性が示唆された.

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