感染症学雑誌
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東京首都圏地域における腸管寄生虫調査とその特徴
野崎 司永倉 貢一布施川 久恵安藤 康彦
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1998 年 72 巻 9 号 p. 865-869

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抄録

終戦前後の不衛生な環境では日本人の寄生虫感染率は異常に高かった.その後の衛生環境の整備にともない, 糞便から検出される寄生虫の陽性率は1%以下までに低下し, その結果, 日本には寄生虫感染がなくなったとされ, 医師からの糞便検査依頼が年々減少してきていた.しかし, 東海大病院では検査依頼の減少にもかかわらず, 糞便中に検出される寄生虫の陽性率が1994年より漸次増加傾向に転じた.鞭虫と蟯虫の感染率は効果的な駆虫薬の使用によって低下する傾向にある.それに対し, 高級魚の生食に起因する広節裂頭条虫症 (大複殖門条虫症をふくむ) 患者の駆虫ができる病院への集中, 日本の国際化にともなう新たな寄生虫 (タイ肝吸虫とビルハルツ住血吸虫) の出現, おそらく有機農法野菜が原因と思われる回虫感染が最近増加していた.とくに回虫の単性寄生感染が顕著な増加をしめしており今後注意を要する.

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